「ういろー」と口ずさむ時、何とも言えない柔らかい音韻と共におっとりとしたあたたかみと、そして日本語にはない謎めいた情感を感じるのではないでしょうか。
「外郎」は室町時代に中国から伝来されました。
はじめ「外郎薬」という薬として日本でつくられ、大へんな評判を呼びました。
その後、外郎薬をつくった外郎家が菓子をつくり、それが菓子の「外郎」となったと言われています。
外郎が日本の菓子の中でユニークな独特な雰囲気を感じさせるのは、この様な生まれ方によるのでしょう。
「山口外郎」は大内氏が栄えた山口の大内文化のようらんの中から、土着性の強い独自な発想により創製されたものと思われます。それは唯一、他の地域の外郎と異なり、自生のわらびの根からとった「せん」と小豆あんを原料としたことで、自然の鄙びた素朴さを持ち乍ら独自な深い味わいを創り上げたことで言えると思います。
御堀堂は「山口外郎」の創始、山口大内御堀の福田屋さんの伝統を受け継いだ製法により、山口外郎の伝統をいつまでも伝えて行きたいと「外郎一筋」に誠意努力を重ねています。
外郎は初め中国から伝えられたものですが、「御堀堂の外郎」は、今では和菓子の味追求の歴史の中で、日本古来の高雅な味わいを持った、素朴であり乍ら、品位のある名菓として多くの方々に喜んで召し上がっていただいて居ります。
心からの御礼と共に、ご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。
三代目堂主
田中 米吉